第6回 配置は「人を活かす設計」である(シリーズ人的資本経営)―人的資本経営において、なぜ人材配置が重要なのか―

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はじめに

もちろんです。
第1回〜第5回と同じトーンで、そのままブログに貼れる完成版として第6回を作成しました。


第6回 配置は「人を活かす設計」である

―人的資本経営において、なぜ人材配置が重要なのか―

はじめに

これまでの記事では、人的資本経営の基本的な考え方や必要性、そして「評価・賃金・配置・育成」という4つの要素が相互に連動することの重要性を見てきました。前回は、その中でも「賃金制度」について、会社が人に何を期待し、何にどう報いるのかを最も具体的に示す制度であることを整理しました。

今回は、その4つの要素の一つである「配置」について取り上げます。

配置というと、人事異動や配属、担当業務の割り振りといった実務的な話に見えるかもしれません。しかし、人的資本経営の観点から見ると、配置は単なる人員配置ではありません。
人が持っている力を、どこで、どのように活かすかを設計することです。

どれほど優れた人材であっても、能力や適性に合わない場所に置かれれば、その力を十分に発揮することはできません。反対に、一見すると目立たない人材であっても、適切な役割や環境が与えられれば、大きく活躍することがあります。

人的資本経営では、人材を単なる「数」としてではなく、価値を生み出す存在として捉えます。そのため、誰をどこに配置するかは、企業価値に直結する重要な経営課題です。

本記事では、なぜ配置が人的資本経営において重要なのか、どのような視点で配置を考えるべきか、実務でよくある課題も含めて整理していきます。

配置は「足りないところに埋めること」ではない

実務の現場では、配置がどうしても場当たり的になりやすい傾向があります。

たとえば、ある部署が忙しいから人を回す、退職者が出たから急いで補充する、新規事業が始まるからとりあえず人を付ける、といった形です。もちろん、日々の業務を回すうえでは、こうした判断が必要になることもあります。

しかし、それだけで配置を考えていると、人的資本経営の観点からは不十分です。

なぜなら、配置とは単に「空いている席に人を置くこと」ではないからです。配置は、本来、その人の強み、適性、経験、今後の成長可能性を踏まえ、どこに置けばその人と組織の双方にとって最も価値が生まれるかを考える行為です。

人手不足が続く環境では、どうしても「今、足りないところ」に目が向きがちです。しかし、短期的な穴埋めだけを続けていると、本人にとっても組織にとってもミスマッチが積み重なり、結果として生産性の低下や離職につながることがあります。

人的資本経営における配置とは、単なる補充や調整ではなく、人材の価値を最大化するための設計です。

なぜ人的資本経営で配置が重要なのか

配置が重要である理由は、大きく分けると次の三つです。

1.人の力は「どこに置くか」で大きく変わるから

同じ人でも、配置される場所や役割によって成果の出方は大きく変わります。

たとえば、対人折衝が得意な人が、顧客との関係構築が重要なポジションに就けば、高い力を発揮しやすくなります。一方で、分析力や緻密さに強みを持つ人が、短時間で多くの対人対応を求められるポジションに置かれると、本来の力を出しにくいかもしれません。

つまり、能力は絶対的なものではなく、配置との相性によって大きく左右されるのです。

人的資本経営は、人材の持つ価値を最大化する経営です。そのためには、「誰が優秀か」だけでなく、「どこで活きるか」を考えなければなりません。

2.配置は従業員の成長や定着にも影響するから

配置は、生産性だけでなく、従業員の成長や定着にも深く関わります。

自分の強みが活かせる仕事、意味を感じられる役割、今後の成長につながる経験が得られる配置であれば、従業員は前向きに働きやすくなります。反対に、適性が活かされない仕事や、将来像の見えない配置が続けば、「この会社で働き続ける意味」を見失いやすくなります。

実務上も、離職理由として表面上は「一身上の都合」とされていても、その背景には配置のミスマッチやキャリア展望の不透明さがあることは少なくありません。

人的資本経営では、人材を今使うだけでなく、将来に向けて育て、活かし続けることが求められます。配置は、その出発点でもあります。

3.経営戦略の実行力を左右するから

配置は、人事の問題であると同時に、経営戦略の実行力を左右する問題でもあります。

新しい事業を立ち上げる、営業力を強化する、組織のデジタル化を進める。こうした経営課題は、最終的には「誰が担うのか」という問題に行き着きます。

どれだけ立派な戦略を掲げても、それにふさわしい人材が配置されていなければ実行できません。逆に、人材の強みや可能性を踏まえた配置ができれば、組織全体の実行力は大きく高まります。

その意味で、配置は単なる運用上の判断ではなく、経営戦略を現実の成果につなげるための重要な仕組みです。

良い配置に必要な視点

では、人的資本経営の観点から見て、良い配置とはどのようなものでしょうか。

企業によって考え方は異なりますが、少なくとも次のような視点は重要です。

1.本人の強みや適性が活かされていること

まず重要なのは、その人の強みや適性が活かされているかという点です。

ここでいう適性とは、単なる性格診断のようなものではありません。これまでの経験、得意な業務、成果が出やすい場面、周囲との関わり方などを含めて、その人が力を発揮しやすい条件を見極めることです。

もちろん、配置は常に本人の希望どおりになるわけではありません。しかし、少なくとも「なぜこの配置なのか」が説明できること、そして本人の特性と大きく矛盾しないことは重要です。

2.現在の業務遂行だけでなく、将来の成長も見ていること

良い配置は、今の業務をこなすためだけのものではありません。将来の成長やキャリア形成も含めて考える必要があります。

たとえば、今すぐ成果が出る人を同じ仕事に固定するだけでは、短期的には効率が良いかもしれません。しかし、それでは本人の成長機会が限られ、将来的な戦力の幅が広がらないことがあります。

反対に、一定の負荷を伴っても、新しい経験を積ませる配置が、その人の成長につながることもあります。

人的資本経営では、人材を「今の戦力」としてだけではなく、「将来の価値を高めていく存在」として捉えます。そのため、配置にも育成的な視点が必要です。

3.組織全体のバランスを見ていること

配置は個人単位で考えるだけでは不十分です。組織全体として、どの部門にどのような人材がいるのか、偏りがないかを見ていく必要があります。

たとえば、ある部署に業務が集中して長時間労働が常態化している一方、別の部署では人材が十分に活用されていないという状況があるかもしれません。また、特定の管理職の下にだけ負荷が集中していることもあります。

人的資本経営では、個人の活躍だけでなく、組織全体として健全に力を発揮できる状態を目指します。そのため、配置には全体最適の視点も欠かせません。

4.本人への説明可能性があること

配置は人事権の範囲内で行われるとしても、本人にとって納得感があることは重要です。

なぜこの役割なのか、何を期待されているのか、この配置でどのような経験を積んでほしいのか。こうした点がある程度説明されることで、本人も新しい役割を前向きに受け止めやすくなります。

逆に、理由が分からないまま異動や担当変更が繰り返されると、不信感が生まれやすくなります。

人的資本経営は、人を一方的に動かす管理ではなく、人の力を引き出す経営です。その意味でも、配置の説明可能性は重要です。

よくある配置の問題点

実務の現場では、配置について次のような問題がよく見られます。

一つは、人手不足への対応が優先されすぎて、常に場当たり的な配置になっていることです。この場合、短期的には回っているように見えても、本人の適性や成長とのズレが大きくなりやすくなります。

また、「この人は何でもできるから」と特定の人に負荷が集中するケースもあります。こうした人材は一時的には組織を支えてくれますが、過度に依存すると、本人の疲弊や退職リスクが高まります。

さらに、年次や過去の慣行で管理職や重要ポジションを決めているケースもあります。本来はマネジメント適性や役割遂行能力を踏まえるべきところ、年齢や勤続年数だけで判断してしまうと、本人にとっても組織にとっても負担が大きくなることがあります。

加えて、配置後のフォローが弱いことも少なくありません。新しい役割に就けただけで終わり、その後の支援や確認がなければ、せっかくの配置も成果につながりにくくなります。

配置は評価・賃金・育成とつながっている

人的資本経営では、配置は単独で考えるものではありません。評価・賃金・育成と密接につながっています。

たとえば、評価によって見えた強みや課題は、次の配置を考える材料になります。また、新しい役割や責任を担う配置であれば、それに見合った賃金や処遇も検討する必要があります。さらに、新しい配置に就いた人材には、その役割を果たせるように育成や支援が必要です。

このつながりがないと、配置はただの人の移動になってしまいます。

たとえば、「成長のため」と言って新しい部署に異動させても、必要な支援がなければ本人は苦しくなるだけかもしれません。逆に、強みを活かす配置をしても、それが評価や処遇に反映されなければ、本人の納得感は得にくくなります。

配置を人的資本経営の一部として機能させるには、評価・賃金・育成との連動が欠かせません。

実務でまず見直したいポイント

配置を見直すときは、最初から大きな異動方針を変える必要はありません。まずは、自社の配置にどのような偏りやズレがあるかを把握することが大切です。

たとえば、次のような点は確認しやすいポイントです。

  • 特定の部署や個人に負荷が偏っていないか
  • 本人の強みや適性が活かされているか
  • 配置の理由や期待役割が明確になっているか
  • 異動や担当変更が育成につながっているか
  • 配置後のフォローや支援が行われているか

特に、離職が多い部署や、異動後に不調やパフォーマンス低下が起きやすい職場がある場合には、配置のあり方に何らかの課題がある可能性があります。

人的資本経営の第一歩は、制度を増やすことではなく、自社の実態を正しく見ることです。配置についても同じで、まずは「誰をどこに置いているのか」「それはなぜか」を見える化することが重要です。

まとめ

配置は、人的資本経営において極めて重要な要素です。

なぜなら、配置は単なる人員の割り振りではなく、人が持っている力をどこで、どのように活かすかを設計することだからです。適切な配置は、生産性を高めるだけでなく、従業員の成長や定着、組織の実行力にもつながります。

そのためには、本人の強みや適性、将来の成長可能性、組織全体のバランス、そして説明可能性といった視点が必要です。また、配置は評価・賃金・育成とつながってこそ、本来の意味を持ちます。

人的資本経営を進めるうえでは、配置を単なる運用の問題としてではなく、人材価値を最大化するための経営上の設計として捉えることが大切です。

次回予告

第7回では、「育成」について取り上げます。人的資本経営において、育成を単なる研修実施で終わらせず、組織の成長につなげるにはどう考えるべきかを整理していきます。

最後に

「配置が場当たり的になっており、育成や定着につながっていない」
「異動や役割変更の理由が本人に十分伝わっていない」
「人手不足への対応に追われ、適材適所まで考えきれていない」

そのような場合には、配置を単なる人員調整ではなく、人材活用と経営の両面から見直すことが重要です。

当法人では、人材配置、評価制度、賃金設計、育成方針を含めた人的資本経営の実務設計支援を行っています。ご関心のある方は、お気軽にご相談ください。

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